予防接種とは

予防接種は個人の身を守るほか、多くの方々が接種を行うことで集団免疫を獲得することができれば、ワクチン接種をすることができない方々への市中感染のリスクも低減されます。このように社会全体で感染症を流行させない予防対策につながることにもなります。
当院では以下の予防接種(ワクチン接種)を行っています。
インフルエンザワクチン
インフルエンザワクチンとは
インフルエンザは発熱や咳、全身痛などをきたすウイルス性疾患です。咳やくしゃみで周囲に感染し例年猛威をふるっています。学校保健法では5日間の出席停止、通常は7-10日程度で症状は落ち着きますが、小児の場合は脳炎のリスク、高齢者、呼吸器疾患など合併症をお持ちの方は肺炎など重症化のリスクが高まります。
インフルエンザワクチンは1回の接種による持続効果期間は約5ヵ月、接種後に効力を発揮するまでに約2週間の期間を要します。インフルエンザは例年12月~3月にかけて流行するため、流行のピークを見据えて11月中、遅くとも12月中旬までには接種を済ませておいてください。通常は1回接種ですが、13歳未満のお子さまは計2回の接種が必要です。2回接種の場合は、1回目の接種を終えた2~4週間後に2回目を受けるようにします。
例年、65歳以上、または60歳以上かつ一定の障害をお持ちの方は公費の対象となっています。接種時期が近づきますと市のホームページが更新されますのでご確認ください。
経鼻噴霧型インフルエンザワクチン(フルミスト点鼻液)
従来の注射によるワクチンではなく、鼻にスプレーするタイプの新しいインフルエンザワクチンです。
従来のワクチンが、一旦体内に侵入したウイルスを排除するIgGという抗体を誘導するのみだったのに対して、フルミストはIgGに加えて、粘膜からのウイルスの侵入そのものを防ぐIgAも誘導するため、理論上感染予防効果は従来のワクチンと同等以上とされています。主なメリットは注射による痛みがないこと、小児の場合も1回接種でよいこと、従来のワクチンが5か月程度の持続であったのに対し、12か月以上効果が持続することです。デメリットは、2回接種の場合と比べても費用が割高となってしまう点、弱毒生ワクチン(弱毒化された生きたインフルエンザウイルスそのもの)であるため、まれに弱い風邪のような症状が出てしまうことがある点、それが周囲に感染し軽い症状が出る可能性がある点となります。対象年齢は19歳未満となります。
数に限りがございます。接種シーズンが近づきますとホームページ上で告知しますのでご確認ください。
新型コロナワクチン
新型コロナワクチンとは
新型コロナウイルス感染症の重症化予防目的に実施される予防接種です。
当院で接種可能なワクチンはファイザー社のmRNAワクチンであるコミナティ筋注用となります。原則自費での接種となりますが、高齢者を対象に秋~冬にかけて期間限定で助成が行われている可能性があります。詳細につきましてはお住いの自治体の公式ホームページをご覧ください。
なお、インフルエンザワクチンとの同時接種も可能です。
肺炎球菌ワクチン
肺炎球菌ワクチンとは
市中肺炎の原因のおよそ2~4割が肺炎球菌という病原菌を原因とするものです。肺炎球菌による肺炎は重症化しやすく特に65歳以上の方はしっかりと予防対策を取っておくことが大切です。
当院では、成人を対象としたニューモバックスNPとプレベナー20の2種類の肺炎球菌ワクチンを接種することができます。
ニューモバックスNPは、90種類以上の血清型がある肺炎球菌の内の、特に頻度が高いとされる23種類に予防効果があります。メリットは公費対象であれば比較的安価に接種ができる点です。かつては65歳以上5歳刻みで公費対象でしたが、現在は主に65歳の方が対象です。デメリットは5年以上経過すると効果が減弱する点で5年ごとの接種が必要でした。
一方プレベナー20はカバー範囲はニューモバックスとほぼ同等ですが、効果が一生涯続くため1度の接種で済みます。公費負担がないためやや費用は高めとなる点がネックです。
現時点でのおすすめは、65歳時に公費でニューモバックス、1年以上あけてプレベナー20を接種されるのがよいでしょう。もし公費対象外で費用を抑えたいのであれば、プレベナー20の単体接種のみでも十分です。
ただし今後新しい肺炎球菌ワクチンが登場する見込みであり、まずニューモバックスを打ち、新しいワクチンの登場を待って判断するのも一つの方法です。ニューモバックスの公費対象となる方など詳細につきましては、お住いの自治体の公式ホームページをご覧ください。
奈良市の「成人用肺炎球菌予防接種の助成」はこちら
帯状疱疹ワクチン
帯状疱疹ワクチンとは
水痘・帯状疱疹ウイルスはみずぼうそう、帯状疱疹の原因ウイルスです。日本人のおよそ9割が体内にこのウイルスを持っていると考えられます。加齢、過労等によって免疫力が低下すると、体内に潜伏していたウイルスが活性化し、神経領域に沿ってピリピリした痛みや帯状の水疱、皮疹がみられるようになります。皮膚症状は3週間程度で治まりますが、高齢で罹患したケース、帯状疱疹が重症化した場合は、数年以上にわたり強い痛みに悩まされることがあります。この帯状疱疹後神経痛に対する有効な治療手段はなく、このようなリスクをできるだけ低減させるために行うのが帯状疱疹ワクチンです。
帯状疱疹ワクチンには、弱毒生ワクチンと不活化ワクチン「シングリックス」の2種類あります。前者の生ワクチンは安価ですが、発症予防効果は50-70%程度、帯状疱疹後神経痛の予防効果も約66%と低く更に5年程度で予防効果は低下します。後者のシングリックスは発症予防効果が90%を超え、帯状疱疹後神経痛の予防効果も90%以上です。更に効果は10年以上持続します。2回接種の必要があり費用は高めとなりますが、せっかく接種されるのなら効果の高いものを接種してほしいとの思いから、当院では後者のシングリックスのみを採用しています。
50歳以上の方が接種の対象となりますが、公費制度はやや複雑です。まず65歳から5歳刻みで100歳までの方、100歳以上の方が国の定期接種の補助が得られ費用的には最も有利です。一方で50-64歳の方は奈良市独自の助成制度があります。65歳以上で5の倍数の年齢でない方には残念ながら助成がなく自費接種をするか5の倍数の年齢になるまで待つ必要があります。
奈良市の「帯状疱疹ワクチンの助成」はこちら
成人麻疹・風疹ワクチン(MRワクチン)
麻疹・風疹ワクチン(MRワクチン)とは
MRワクチンは麻疹と風疹を予防するワクチンで、感染力が非常に強く、肺炎などの重篤な疾病を起こす可能性がある麻疹や風疹を予防できます。
風疹は数年に一度の流行が見られ、妊娠中の女性が感染した場合、赤ちゃんが深刻な目や耳の障害、心臓疾患をもって生まれてしまう先天性風疹症候群が問題となっています。
当院では妊娠を計画している女性や、そのパートナー等を対象とした接種を行っています。
MRワクチンは現在では子供の時に2回接種をしていますが、1回接種のみ、もしくは全く接種していない世代があり、これらの方は接種を検討ください。
通常の流れでは、母子手帳で2回接種が確認できない場合、風疹抗体価検査(風疹に対する免疫が十分あるかどうかを調べます。)を行い、免疫が不十分であった場合ワクチン接種を行います。抗体価検査は奈良市の助成制度がありますが、ワクチンは自費での接種となります。注意点は、弱らせたウイルスそのものを接種する生ワクチンであるため、妊娠中の方には接種できず、また接種後2か月は避妊を行う必要があります。計画的な検査、接種をお勧めします。
なお検査をスキップしてワクチン接種のみを行うのも一つの方法です。また3回接種しても問題はないため、自分が今まで何回打ったかわからない場合とりあえず1回接種しておくのも一つです。検査についての詳細は、当ホームページの診療内容→健康診断の項もご参照ください。
MRワクチンを1回接種することによって、約95%の人が麻疹ウイルスと風疹ウイルスに対する免疫を獲得することができると言われています。また、2回の接種を受けることで予防効果は99%まで上昇します。
※数に限りがあるため、事前に電話連絡で在庫の確認が必要です。